手仕事の魅力:COL オリジナルシューズ ローファー

「なぜもっと早くここに辿り着かなかったのか?」と感じることは、特にファッションにおいては多く感じる節があります。
もちろん、仕事や友人付き合いでも「この考え方にもっと早く辿り着いていれば…」などと思うことはありますが、服装は嗜好性が強いぶん、常にアップデートされていく印象です。

僕は比較的周りに教えてくれる方がいますから、無駄のないルートを通らせて頂いているように思います。
それでも今回仕立てて頂いたローファーを受け取ったとき、そして職人である霜埼氏とお話させて頂いたときには「なぜもっと早く…」と思わずにはいられませんでした。

といっても、今シュークロークに収まっている靴もどれもお気に入りですから、これまでの購買が無駄なわけではありません。
ただ選択肢として、この素晴らしい靴を考慮することは明らかに僕の今後の靴ライフをさらに豊かにするでしょう。

◆COL オリジナルシューズ

僕が普段お世話になっているテーラーは、もっぱらこのCOL神戸です。
それにはいくつか理由がありますが、要約すると下記のような要素が強いように思います。

・質が高い
・ワードローブに理解がある
・コミュニケーションがとりやすい
・提案に共感できる

最後の「提案に共感できる」とは少し傲慢な表現になってしまいましたが、つまりセンスの問題だと思います。
いくら良い物でも、好みと合わなければ依頼には至りません。

今回もこの要素を踏まえておすすめ頂いたのが、COLが職人・霜埼氏と手がけるオリジナルシューズです。

そのクオリティはこれからお見せするとおりですが、パターンオーダーであり、ハンドソーンウェルテッド製法を採用していることを考えるとかなりのハイパフォーマンスに感じます。

◆革について

いわゆるコインローファーです。

革はデッドストックのワインハイマー、明るめで柔らかな雰囲気のブラウンを選びました。
ワインハイマーはカールフロイデンベルグを前身に持つタンナーです。
霜埼氏が10年前に購入した革だそうです。

もともとコルウのオリジナルシューズに興味があった僕が、革のサンプルを見せて頂きに訪問した際になぜかこの革がありました。
なんであったのかは忘れましたが、とにかくなぜかありました。
とても綺麗な色味で、所持しているどの靴とも違った雰囲気になりそうだと感じこの革に決めました。

靴になって出来上がり、その雰囲気は想像以上に美しいものでした。
更に履いてみて感じたのは革の柔らかさです。補正も相まって、素晴らしい履き心地を実現してくれました。

◆ディティール

まずはデザインからですが、かなりオーソドックスなコインローファーといえそうです。
ローファーの代名詞的存在、ウエストンの180とは同じオーソドックスでも全く異なります。

通販サイトよりお借りしました

こちらがウエストン180。
ノーズが短く、Uチップモカシンが施されたデザイン。まさにトラディショナルですね。
当然ウエストンも素晴らしい靴ですが、今回のオリジナルローファーとは比較になりません。
どちらが上というわけではなく、製法やアプローチが別ものです。
「ローファーといえば」ということでこの180を出しましたが、ここで議論を深めるのは不毛でしょう。


COLオリジナルローファーは奇をてらった様子はありませんが、高度な技術は各部に垣間見られます。


靴底から見るラストは、踏まずがしっかり絞られています。
履いてみるとこの部分の突き上げが心地良い。
また、トウ部分には釘があります。わずかに耐久性があがることもあるようです。

横顔です。革質の良さが伺い知れるのではないでしょうか。
ベヴェルドウエストですね。
シームレスヒールですが、縫い目はサイドにあります。
この縫い目も良いアクセントですよね。

当然のようにシームレスヒールです。
さらにピッチドヒール。接地面に向けて細くなっていっています。
アッパーは逆に足首に沿うグラマラスなフォルム。
踵はしっかりホールドされますが、圧迫感はありません。
初めから無理のないフィッティングを実現しています。

ステッチも丁寧です。
端正な靴ですから、この丁寧な仕事が雰囲気にあっています。

全体的にデザインは中庸でありながらも、高い技術からくるオーラめいたものを感じます。
「良い靴だなあ」と感じられる、素晴らしいディティールです。

 

◆着用

APCのデニムとユニクロのリネンシャツです。
極カジュアルですが、ジャケットスタイルでもいけそうです。
スーツはちょっと難しいかと。

 

僕の足はローファー泣かせで、たちまち履き口がわらってしまいます。
今回はその悩みを踏まえて補正していただき、履き口はまったくわらっていません。
さらに痛みもまったくない。
僕にとって初めてのフィッティングで、むしろとまどってしまったほどです。

「これ、全然痛くないんですけど大丈夫なんですか?」

「痛くなければ、その方が良いですね!」

という至極当然だろうと思われるやり取りをさせてしまいました。

この日は約8,000歩歩きましたが、歩行に問題は全くありません。
10,000歩歩いてたらさすがに靴擦れしたかもしれませんね。
馴染めばいくらでも歩けてしまいそうです。
ハンドソーンウェルテッド製法の靴は他にも持っていますが、この履き心地はさらに格上です。

◆補正について

先述の履き口の“わらい”について、対策をとっていただく必要がありました。

それがこの内張りの革だそうです。
5㎜厚のヌメ革をはり、足に沿うように。
さらに履き口の高さにも考慮して、ホールド感を増しています。
一日歩行しても、フィッティングが悪くなることはありませんでした。
今まで苦痛に耐えて無理やり合わせていたのはなんだったんだ?

◆あとがき

見た目からフィッティングまで、全てにおいて質の高い靴でした。
ブリティッシュタンを彷彿とさせる柔らかい色味も気に入りましたね。
エイジングが楽しみです。

また今回はオーダー会での受け取りでしたので、職人に直接お会いできたのも良かったです。
一度お会いしただけですが、実直なお人柄が伝わりました。
今後もこのオリジナルシューズを少しずつ増やしていく予定です。
これからが楽しみです。

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装い、メソッド。

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