雨の装い:前原光榮商店 長傘のレビュー

メンテナンス

服好き界隈でよく耳にする提言があります。
「雨の日こそ気分のあがるものを身に着けるべき」。

これには、確かに、と頷けるロジックがあります。
きくところによると東京は年間で3分の1ほど「雨の日」だそうなんです。
服好きといえば季節感は重視するところですが、四季を単純に同じ期間と換算すればそのどれよりも機会が多いのが「雨の日の装い」というわけですね。

ちょっと余談ですが、似たようなロジックをもって先日コートをお願いしてきました。
例えばスーツを一着買った場合。
ワードローブに既に5着のスーツがあるとして、均等にローテーションするとしましょう。
年中着るとしても、新しく買ったスーツは約60日程度しか着ないことになります。

ところがお気に入りのコートを買った場合。
秋~冬にかけて約4カ月ほど着る機会があるわけです。
毎日同じコートでも構わないと思いますが、仮に2着でまわした場合、これまた60日着用することになるんですね。

僕は上記のケースに比べればスーツはたくさんありますから、それほどにコートを購入する意義はあるということです。
…ということに気づいたので、コート欲しいです!!といつも伺うサルトに意気込んでいったら、「確かにそうですよね。まあ、行き帰りだけなので着てる時間は短いですけどね。」とのお言葉に衝撃的な事実に気付かされました。
スーツは一日中着てるけど、コートはそういうわけじゃない……。
でもコート欲しいのでもちろんお願いしてきました。
これはまた別件としてレビューします。

◆前原光榮商店?

もはや前置きで息が切れてきましたが、今回のブランドのご説明です。

前原光榮商店は国産高級洋傘としては代表的ブランドと言っていいでしょう。
傘と言えば、英国「フォックスアンブレラ」の細巻きが有名ですがこの前原光榮商店の傘は質実剛健でいてエレガント。
もちろんそれぞれの好みで良いと思います。
僕の目にはどちらが良いとか悪いとかはわかりませんでしたね。

「皇室御用達」といったワードもネットでは散見されますが、実際にさしているところは見つけられませんでした。

ブランドコンセプトには素晴らしいものを感じます。
以下に引用しておきます。

わたしたちは「傘」という字に含まれる4つの「人」は、それぞれ

1. 生地を織る 2. 骨を組む 3. 手元を作る 4. 生地を裁断縫製する

の4つの分野の職人たちを表していると考えています。

前原光榮商店はこの4つの技術を高め、継承してきました。

特に生地の裁断縫製は、傘の出来栄えを左右する最も重要な技術のひとつ。いくら高品質な生地・骨・手元があったとしても、生地の裁断縫製が良くなければ美しいフォルムの傘は仕上がりません。

職人は生地を裁つ際の型、裁ちの正確さ、ミシンの針の落とし方さえにも気を使います。

数ミリの誤差が生じるだけで、傘を開けた時の張りや音、フォルムに影響があるからです。

このように前原光榮商店はそれぞれの素材の品質はもちろんのこと、この裁断縫製加工に強いこだわりを持って傘を製造しています。

https://shop.maehara.co.jp/about

日本における、日本人のものづくりに対する情熱も記されていましたがあまりに長くなるので引用からは割愛しました。

実際、想いはとても重要な要素ですが、想いがどのように製品に反映されているかの方が僕にとっては重要です。
その点においても、前原光榮商店の傘は細かなこだわりが素晴らしいですね。

 

◆ディティール

雨用鞄と共に…

今回紹介するのは60㎝16本骨傘。
8本の方が細く巻けるのでスタイリッシュですが、開いたときの丸い形がなんとも雰囲気が合って好きなんです。
色味はブルーグレー。本当は黒一択だったんですが、妻から「高級傘を買うのに、黒はつまらない」といわれ「そんなもんかなあ」と思いながらもブルーグレーにしました。
今も「そんなもんかなあ」と思っていますが、この色味自体はとても気にっています。
……黒の長傘、カッコいいと思うんだけどな……。

持ち手は「籐」です。
別名ラタンとして、家具などに使われることもあります。
ヤシ科の植物だそうですが、かなり丈夫で美しい艶です。
持ってみるとしっとりと手に吸い付き、上質な素材であることがわかります。

 

石突部分。金属で補強されていて、強靭な印象です。

 

開いてみると、8本傘にはないフォルム。
面積も少し広いそうです。

長傘は身長が高い方は65㎝や70㎝をお選びになる方もいらっしゃいますが、16本骨傘なら60㎝でも充分とのことでした。
もちろん、長いほうが良ければ他の選択肢もありますが、重量が結構あるので個人的にはお勧めしません。

◆装いに落とし込む

傘も紳士小物のひとつ。
ということでいつも通りInstagramから転載です。

三陽商会ののトレンチコートを着ています。
今年は専らこれに頼り切りですね。
雨ということで、スーツはCOLのスミズーラ……ではなくダーバンです。
万一濡れても、少しだけ悲しくなる程度で済みます。

ちなみにこれは別日ですが、靴はスエードのチーニーを履くことが多いです。
雨の日にスエードは安心感があります。

◆まとめ

それにしてもこの色味。雨の日にとても馴染んでいて、やっぱり素敵ですね。
色合わせにもいろんな方法があると思いますが、やはり合わせる対象と同系色の方が難易度的に僕に合っているような気がします。

ワインのマリアージュなら「お互いを引き立てあう、バラバラの味わい」の合わせ方もありますがやっぱり上級です。
普通はその食材にあるテイストをひろって合わせますね。

雨にあわせたブルーグレーは僕にとってとても気分があがるものでした。
妻よありがとう。でも黒もカッコいいと思うんだ。

メンテナンス
SNSではより等身大のyurimeをpostしています。ひかないでね。
装い、メソッド。

コメント

  1. […] 前回、「雨の日の装い」をテーマに記事を書きました。この記事を見返すと、何気なく使っている自分の鞄がなかなかいいエイジングをしていることに気が付きました。ここでエイジングにまつわる横道に敢えて逸れますが、僕はウイスキーが好きです。これにまつわる難関資格を持っていますし、スコットランドに一人旅をして蒸留所巡りを楽しんだほど。このウイスキー、当然ながら職人仕事です。マスターブレンダーを中心に、様々な職人が織りなす独特の伝統と理論の結晶がウイスキーとして製品になります。仕込み水、ポットスチルの材質、温度…様々な環境に気を配りますが、人が弄るのはほんの少し。ウイスキーは大半以上を樽の中で「エイジング」して過ごすのです。少なくともスコットランドのウイスキーは若くても12年程度。30年を超える熟成もごまんとあります。 […]

  2. […] […]