思えば、美しいものはいつも自然と手仕事の融合だったように感じます。
もちろんどこかに例外はいくらでもあるでしょうが、今回は自然の生み出す淡い色味がテーマです。
僕は少しだけワインやウイスキーに知見があるのですが、自然派ワインなどありますよね。
「ヴァン・ナチュール」とか呼ばれるやつです。
以前、生産者の方にお伺いしたことがあるのですが、「ナチュールと呼ばれると努力してないように思うやつがいるから駄目だ」とのこと。
つまり、自然派=放任主義と定義づけて「楽しているのでは」と考える方がいるということですね。
実際にはナチュールであっても当然膨大な労力がかかりますし、自然派だからといって「省く」だけなわけがありません。
良いものを生み出すには自然を味方につけなければいけませんが、自然を味方につけるにはとても大きな労力がかかるということです。
今回の生地、「ペコラネラ」にもそんな背景があるのでしょうか……。
こちらは生産者に話をきいたわけではないので何とも言えませんが、一朝一夕にはつくれない、雰囲気のあるスーツを仕立てて頂きました。
◆COL
仕立てて頂いたのはお馴染み、COLです。
COLでは多数お世話になっていますので、記事はたくさんあります。
リンクがとても多くなるので、気になる方は検索してごらんになってみてください。
いつも通りスミズーラ……。COLで言うところのパターンオーダーで依頼しました。
ちなみにCOL、改装されたようで、先日お伺いしてきました。
あまりにも美しく洗練された空間で驚きましたね。ちょっと叫んでしまいましたよ。
あんなにおっきい声出したのは産声以来ですね。
◆ディティール
グレーにも見えますが、淡いブラウンのグレンチェックです。
今回……というか、毎回少しずつディティールが違うのですが、特に今回は違ったディティールを取り入れています。
まずチェンジポケット。
スーツのディティールとして取り入れたのは実はこれが初めてです。
そしてナットボタン。
今まではほとんど水牛ボタンでしたので、こちらも珍しい試みです。
しかしこの生地の優しい色味にはナットボタンかなと。
写真が多くなりすぎるので載せませんが、パンツはいつも通りのボタンフライ、サイドアジャスター付きのベルトレス仕様です。
◆生地について
今回使用して頂いた生地はロロピアーナのペコラネラです。
ペコラネラとは、「黒羊」という意味だそうです。
羊といえば一般的に白いものですので、この「黒羊」とは転じて「仲間外れ」といった意味合いで使われることがあるそうです。
しかしニュージーランドのブリーダー、フィオナガーデナー氏曰く、「ペコラネラこそ羊の原型ともいえるカラー」だと、つまりオリジナルだというわけですね。
どういったロジックでその答えにたどり着いたかわかりませんが、そこから生まれたペコラネラのコレクションはどれも奥深く素晴らしい色味です。
今回のグレンチェックももちろん例にもれず、活かしきれるか僕の方が心配なくらいですが……。
とりあえず着てみましょう。
◆着用
まずはスタンダードにスーツとして。
タイはアットヴァンヌッチのセッテピエゲです。
甘いブラウンカラーはマッチするような気がしますね。
このスーツ、かなりラグジュアリーな雰囲気なので目立つかと思いましたが、スタンダードな合わせ方をすればうまく溶け込む印象ですね。
ニットのタートルネックも合わせてみました。
本領発揮というところでしょうか。
ちなみにこちらはジャケパンでした。
ネイビーのコットントラウザーズ。ウールの方が馴染みますが、ラフにコットンでもいけそうでした。
ニットにジャケットは個人的にも冬の定番スタイルなので、この使い方は便利です。
ちょっと変化球で、レスレストンでオーダーしたデニムシャツとドレイクスのブラウンソリッドタイ。
普段はなかなかしづらい服装(ビジネスには難しい)ですが、遊び着としてはありかもしれませんね。
全体的に思ったより使いやすくて嬉しい誤算です。
◆まとめ
このスーツ、先日東京出張がありましたので着ていきました。
ちょっとした(ほんとにちょっとした)パーティに出席する予定があったのですが、とても適した雰囲気だと感じました。
柔らかい色合いは日光のもとでは優しいブラウンですが、光の加減によってはグレーにも見えます。
柄が正統派なグレンチェックであることも相まって使いやすく感じるのですね。
無染色でないと出ない色味、この色味でないと出ない雰囲気、そしてCOLのこの型紙でないと出ない魅力があるように思います。
僕にしては少々冒険でしたが、楽しい冒険となりました。
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